自衛官は消防士や警察官のような地方公務員ではなく、特別職の国家公務員です。そのため、消防士や警察官よりも少々年収が高くなる傾向にあります。
自衛官の年収の内訳や年収を上げるポイントを理解することで、自衛官として受け取る年収を少しでも上げやすくなるでしょう。
今回は、自衛官の平均年収や年収の内訳、年収を上げるポイントなどを解説します。この記事を参考にすることで、自衛官の年収について網羅できるでしょう。

年収を理解することで自衛官のリアルを想像しやすくなります!
自衛官の平均年収


自衛官全体の平均年収は約640万円となっています。しかし、年齢や階級などによっても平均年収は大きく異なるため一概には言えません。
年齢や階級を含めた平均年収と民間企業との比較は、以下の表を参考にしてください。
階級と年齢 | 平均年収 | 民間企業平均年収 |
---|---|---|
2等陸士(18歳) | 約309万円 | 約300万円 |
陸士長(21歳) | 約336万円 | 約330万円 |
3等陸曹(25歳) | 約502万円 | 約380万円 |
2等陸曹(32歳) | 約614万円 | 約440万円 |
1等陸曹(44歳) | 約700万円 | 約530万円 |
陸曹長(53歳) | 約730万円 | 約530万円 |
上記の表はあくまで参考なので、階級と年齢が一緒でも同じ年収が受け取れるとは限りません。なぜなら、手当てやボーナス額によっても年収が変わるからです。
また、幹部以上になればさらに多くの年収を受け取れます。幹部以上を目指す方は「自衛隊幹部候補生」として採用されるのがおすすめです。



自衛隊幹部候補生は、幹部自衛官としてのキャリアを歩めます!
自衛官の想定年収と手取り額


自衛官の年収を考えるなら、年収に加えて手取り額も理解しておくことが大切です。ただ自衛官の年収は、階級や勤務地、扶養の有無、任務内容によっても大きく異なります。
それらを理解した上で、以下表にある陸海空自衛官それぞれの想定年収と手取り額を参考にしてください。
所属部隊 | 階級・年齢 | 想定年収 | 手取り額(概算) |
---|---|---|---|
陸上自衛隊 | 2等陸士(20代前半) | 約330万円 | 約260万円 |
2等陸曹(30代前半) | 約500万円 | 約400万円 | |
1等陸佐(40代後半) | 約750万円 | 約580万円 | |
海上自衛隊 | 2等海士(20代前半) | 約350万円 | 約270万円 |
3等海曹(30代前半) | 約550万円 | 約430万円 | |
1等海佐(40代後半) | 約800万円 | 約620万円 | |
航空自衛隊 | 2等空士(20代前半) | 約340万円 | 約260万円 |
2等空曹(30代前半) | 約520万円 | 約410万円 | |
1等空佐(40代後半) | 約780万円 | 約600万円 |
上記はあくまで、標準的な勤務をした場合の一例で、配置手当や賞与などを含んだ年収想定です。どの階級を目指すのかや業務内容、配置によっても異なるため、自分の目指すキャリアでどの程度の手取りとなるかを計算してみましょう。



概算でも理解しておくことで今後の計画を立てやすくなります!
自衛官の初任給はいくら?


自衛官の初任給は、高卒で「224,600円」大卒で「239,600円」となっています。令和7年度時点では大卒の初任給は24万円以下ですが、複数年かけて248,000円まで引き上げる予定だと発表されています。
参考:自衛官候補生
ただ、自衛官候補生の間(入隊から約3か月)は、月額179,000円となるため注意が必要です。
自衛官候補生は、入隊後の3か月間で基礎教育や研修を受けます。基礎教育と研修を修了すると、2士に任用されます。2士任官後には基本給が増加するだけでなく、自衛官任用一時金の344,000円が支給されることも理解しておきましょう。



自衛官は初任給だけで見るのではなく、中長期視点で考えることが大切です!
自衛官の年収内訳


自衛官の年収を理解するためには、内訳についても知っておくことが大切です。自衛官の年収内訳としては、以下の3つが挙げられます。
- 基本給
- 各種手当
- ボーナス
自衛官の年収は、各種手当とボーナスによっても支えられています。どんな手当てがあるのかは、自衛官になった後にどんな職種や業務に就くかの判断基準にもなるため、事前に理解しておくことが大切です。



自衛官を目指す方は、年収の内訳としてどんなものがあるかを細かく確認しておきましょう!
基本給
基本給とは、毎月必ず支払われる賃金のことであり、手当てやボーナスのように状況に応じて変化するものではありません。自衛官の基本給は「公安職俸給表」によって定められており、階級に基づく俸給表が適用されるのが特徴です。
また、自衛官には常時勤務態勢等の任務の特殊性を踏まえ、超過勤務手当相当分が約10%上乗せされています。


以上のことから同じ公務員であっても、自衛官の基本給は少々高いと言えるでしょう。
各種手当
自衛官の年収を考える際には、各種手当の存在は外せません。自衛官が受け取れる具体的な手当ての種類と金額に関しては、以下の表を参考にしてください。
手当の種類 | 支給額 | 支給条件 |
---|---|---|
地域手当 | 勤務地域に応じて支給 | 東京都23区では俸給の20% |
住居手当 | 借家・借間に居住する隊員に対して支給 | 月額最大28,000円 ※賃貸住宅の場合 |
扶養手当 | 扶養家族がいる場合に支給 | 月額3,000円~11,500円 配偶者や子供の人数に応じて変動 |
通勤手当 | 通勤時に公共交通機関や自動車を利用する場合に支給 | 月額2,000円~150,000円 ※距離や通勤方法によって異なる |
配置手当 (特殊作戦隊員手当・乗組手当・航空手当など) | 職務の複雑・困難性が高く、勤務条件が著しく特殊な配置に就く隊員に対して支給 | 俸給水準を調整する月例給として支給 |
特殊勤務手当 (爆発物取扱作業等手当・災害派遣等手当・レンジャー作業手当) | 勤務の特殊性に応じて支給 | 日額250円~42,000円 ※任務の内容や危険度に応じて変動 |
自衛官任用一時金 | 自衛官候補生として入隊し、3か月経過後から2士に任官された際に支給 | 約34万円 ※1年3か月以内に退職すると勤務期間に応じて償還義務あり |
特例退職手当 | 任期制自衛官が任期満了で退職する際に支給 | 約73万円(1任期の場合) ※任期や階級に応じて変動 |
若年定年退職者給付金 | 20年以上勤務し、定年退職した自衛官に対して支給 | 【60歳まで】 若年定年年齢と60歳との差1年につき退職時俸給月額の6か月分を支給 【60歳以降】 60歳と一般の国家公務員の定年年齢(定年引上げ後65歳)との差1年につき退職時俸給月額の3.45か月分を支給 |
参考:自衛官のお給料について | 防衛省・自衛隊帯広地方協力本部
参考:自衛官の処遇改善
参考:人的基盤の強化について 2025年1月17日 防 衛 省
支給条件に当てはまった場合、基本給に加えて各種手当が受け取れます。手当の内容と量によっては、大幅な年収増加も見込めるでしょう。
ボーナス
自衛官は、年に2回(6月と12月)にボーナスとして「期末・勤勉手当」を受け取れます。
自衛隊では人事院勧告に伴い、自衛官の俸給月額及びボーナスを引き上げる等の改正が行われました。一般的な自衛官のボーナス額は年間4.50月分でしたが、令和6年12月から年間4.60月分へ引き上げられています。
参考:/防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の概要 改定の内容 施行期日 法案
自衛官の年収は高すぎる?


自衛官の年収は、民間企業や他の公務員と比較しても高い傾向があります。そのことからも「自衛官の年収は高すぎるのではないか?」と感じる方も多いです。
結論から言えば、自衛官の年収が高すぎるということはありません。自衛官は、災害派遣や国際平和協力活動など危険を伴う任務に従事しています。これらの業務は、一般的な公務員や民間企業の職務とは異なるリスクと責任を伴っており、その対価としての報酬は適切です。
また、自衛官の充足率は2023年度時点で過去最低の51%となっており、今後はさらに多くの自衛官を採用しなければいけません。
年収が高いことは自衛官に興味を持つ方を増やすきっかけにもなるため、現在の年収が高すぎるとは言えないでしょう。



自衛官は国の平和を守る重要な組織のため、年収が高すぎると思うくらいがちょうど良いのかもしれませんね!
自衛官の生活費はどのくらいかかる?


自衛官は基本的に駐屯地内にある寮や共同住宅などで生活しているため、生活費が無料となります。具体的に無料になるのは、以下のような費用です。
- 食費
- 家賃
- 水道光熱費
- 仕事で使用する衣類
- 自衛隊の医療施設での診察費
自衛官は、生活の基盤となる部分もサポートすることで後顧の憂いなくあらゆる任務を遂行できるようにしています。
平均年収が若干高いだけでなく、生活費がほとんどかからない分、相対的に年収の増加とも考えられます。一般的な職業の方よりも、年間で100〜200万円ほどの生活費を抑えられることは、自衛隊ならではのメリットと言えるでしょう。



極論を言えば、自衛官としての給料をそのまま貯金することも可能です!
自衛官で年収1,000万円は可能?


自衛官として年収1,000万円を目指すのは、正直難しいと言えます。平均年収は約640万円ほどであり、中央値としてはさらに低いです。なぜなら、自衛官の階級別の人数は以下の表のようになっており、3曹が最も多くなっているからです。
呼称 | 人数 |
---|---|
将 | 62人 |
将補 | 207人 |
1佐 | 2,162人 |
2佐 | 4,851人 |
3佐 | 10,501人 |
1尉 | 13.981人 |
2尉 | 8,382人 |
3尉 | 5,547人 |
准尉 | 4,930人 |
曹長 | 19,576人 |
1曹 | 26,968人 |
2曹 | 44,679人 |
3曹 | 48,387人 |
士長 | 32,573人 |
1士 | 24,348人 |
2士 |
記事冒頭の平均年収の表だと、1曹でも約700万円の平均年収となっており、1,000万円には届いていません。
自衛官として年収1,000万円を目指すなら、自衛官候補生ではなく「自衛隊幹部候補生」を目指しましょう。幹部以上となれば、年収1,000万円も夢ではありません。
また、自衛官は年間の生活費が無料であり、年間で100〜200万円ほど生活費を節約できます。給料として年収1,000万円は難しくても、自衛官なら実質年収1,000万円とも捉えることも可能です。



年収1,000万円を目指したいならより上の階級を目指せる方法で入隊することが大切です!
自衛官の年収を上げる方法


自衛官の年収を上げる方法としては、以下の3つが挙げられます。
- 昇進して階級を上げる
- 海外派遣や災害派遣へ参加する
- 幹部以上を目指せる採用試験に合格する
自衛官として年収を上げる方法として、入隊する前にするべき対策と入隊した後にできる対策の2つがあります。どちらも努力次第でできる内容のため、年収を上げたい方は必ず確認しておきましょう。



自衛官の年収はすぐには上がりませんが、コツコツ努力することでより確実に年収を上げられます!
昇進して階級を上げる
自衛官の年収を上げるためには、昇進して階級を上げるのがおすすめです。自衛官は、階級ごとに俸給表が規定されており、階級が上がるほど年収も上昇するのが特徴です。
階級別の具体的な俸給月額は、以下の表を参考にしてください。
階級 | 区分 | 俸給月額 |
---|---|---|
陸将・海将・空将 | — | 716,000(円) |
陸将補・海将補・空将補 | (一) | 716,000(円) |
(二) | 586,600(円) | |
1等陸佐・1等海佐・1等空佐 | (一) | 546,700(円) |
(二) | 512,300(円) | |
(三) | 436,200(円) | |
2等陸佐・2等海佐・2等空佐 | — | 385,400(円) |
3等陸佐・3等海佐・3等空佐 | — | 360,900(円) |
1等陸尉・1等海尉・1等空尉 | — | 321,300(円) |
2等陸尉・2等海尉・2等空尉 | — | 298,900(円) |
3等陸尉・3等海尉・3等空尉 | — | 293,300(円) |
准陸尉・准海尉・准空尉 | — | 287,700(円) |
陸曹長・海曹長・空曹長 | — | 280,600(円) |
1等陸曹・1等海曹・1等空曹 | — | 280,500(円) |
2等陸曹・2等海曹・2等空曹 | — | 271,300(円) |
3等陸曹・3等海曹・3等空曹 | — | 253,000(円) |
陸士長・海士長・空士長 | — | 235,300(円) |
1等陸士・1等海士・1等空士 | — | 235,100(円) |
2等陸士・2等海士・2等空士 | — | 224,600(円) |
自衛官として階級を上げるためには「昇任試験」に合格しなければいけません。昇任試験とは、現在の階級から上位の階級へ昇進するために受験する試験のことです。
昇任試験の回数は一般的に「年2回」と定められています。しかし、細かい部分は階級や部隊によって異なるため、昇任試験の回数について知りたい方は衛隊の各地方協力本部や所属部隊に直接確認してみましょう。
海外派遣や災害派遣へ参加する
自衛官の年収を上げるためには、海外派遣や災害派遣へ参加するのがおすすめです。海外派遣や災害派遣へ参加することで、普段の給料とは別に手当を受け取れるからです。特に、危険度や困難さが高い任務に従事することで、支給される手当も増額される傾向にあります。
派遣先や具体的な手当てに関しては、以下の表を参考にしてください。
派遣区分 | 派遣先 | 手当額(日額) | 支給条件・補足 |
---|---|---|---|
海外派遣 | イラク・サマーワ | 最大24,000円 | 宿営地外活動時 |
海外派遣 | 南スーダン | 16,000円 | 国際平和協力活動(PKO)、約30日で48万円 |
国内派遣 | 一般災害地域 | 1,620円 | 通常の災害派遣任務 |
国内派遣 | 被災地(困難任務) | 3,240円 | 特に困難な作業に従事 |
国内派遣 | 原子力災害・大規模災害 | 最大42,000円 | 原子力災害等の極めて危険な任務 |
参考:自衛官の災害派遣手当など | 衆議院議員 河野太郎公式サイト
参考:東日本大震災等の災害時に災害派遣活動に従事した自衛官等に対する災害派遣等手当について、支給に係る通知等を周知徹底したり、支給の適否を確認する体制を整備したりなどすることにより、手当の支給が適切なものとなるよう改善させたもの | 平成23年度決算検査報告 | 会計検査院
参考:自衛官独自の手当には どんなものがあるの?
ただし、これらの任務には身体的・精神的な負担が伴うため、参加を検討する際は自身の健康状態や家族の状況などを考慮した上で参加を検討しましょう。
幹部以上を目指せる採用試験に合格する
自衛官の年収を上げるためには、幹部以上を目指せる採用試験に合格するのがおすすめです。自衛官の基本給は階級に応じて設定されており、「1尉」を超えたあたりから基本給が30万円を超えます。
基本給の増加だけでなく、各種手当の増加やさらなる昇進の機会など複数の要因が年収アップに寄与します。幹部以上を目指せる採用試験に合格して昇進を重ねることで、より高い年収を受け取れるでしょう。
ただ、採用試験によっては、幹部以上を目指すのが困難な場合もあるため注意が必要です。採用試験に関して詳しく知りたい方は、以下の表を参考にしてください。


自衛官の年収は他の公務員と比較しても高い


自衛官の年収は、他の公務員と比較しても高いのが特徴です。年収が高いだけでなく、生活費も削減できるのも自衛官ならではの特徴と言えます。自衛官の場合は、年収だけで考えるのではなく、全体として自分の手取りがどの程度あるのかを考えましょう。
また、年収の内訳を細かく理解しておくことで、入隊後の年収も想定しやすくなります。これから自衛官を目指す方は今回の記事を参考にして、自分がどれだけの年収を受け取れるかを考えてみるのがおすすめです。



自衛官は年収以外にも様々な手当てが厚いのが特徴なんです!
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