「自衛官になりたい!」と思っても、自衛官採用試験の種類は数多く、どれを受験すれば良いかわからないと感じる方もいると思います。さらに、学歴によって受験できる自衛官採用試験も異なるため、事前に細かく理解しておくことが大切です。
今回は、自衛官採用試験の種類や学歴別に入隊する方法などを解説します。自衛官の基礎知識も紹介するので、自衛官について全く知識が無い方も確認しておきましょう。

自衛官になる方法は複数あるため、自分に適した方法を知っておくことが大切です!
自衛官とは?
自衛官とは、日本国の防衛のために防衛省が管轄する自衛隊に勤務する特別職の国家公務員のことです。国の防衛だけでなく、災害時における被災地での救援活動や国際的な平和のための活動なども行います。
自衛官は対応する場所や役割によって、陸・海・空の3つの部隊に分かれています。それぞれの部隊で専門的な知識や技術が要求されるため、入隊する部隊によって専門的な知識や技術を得られるでしょう。
また、国家公務員のため安定した給与や福利厚生が整っています。階級制度も設けられており、経験年数や実績に応じての昇進が可能です。



「自衛官」と似ている言葉も多いため、他の呼び方との違いも理解しておきましょう!
自衛官と自衛隊の違い
「自衛官」と「自衛隊」は言葉は似ていますが、厳密に言うと意味は異なります。「自衛官」は”人”を指し、「自衛隊」は”組織”を指します。
「自衛隊」の代表的な例は、以下の通りです。
自衛隊の部隊 | 主な役割 |
---|---|
陸上自衛隊 | 陸上での作戦行動・災害派遣など |
海上自衛隊 | 海上防衛・護衛艦の運用・機雷掃海など |
航空自衛隊 | 領空防衛・航空警戒・ミサイル対処など |
以上のように、「自衛隊」は日本の安全を守るための組織全体を指し、そこで実際に任務を遂行する隊員が「自衛官」と呼ばれることを理解しておきましょう。



「自衛隊に入りたい=自衛官になりたい」ということです!
自衛官と自衛隊の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。


自衛官と軍隊の違い
自衛官についての知識が無い方の中には、「自衛官=軍隊」だと思っている方もいます。しかし、日本の自衛官は「軍人」ではなく、あくまで「防衛組織の職員(国家公務員)」という位置付けです。
この違いは、日本国憲法第9条にも明記されています。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 ② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 |
---|
上記のように、日本国憲法第9条によって「戦争の放棄」と「戦力不保持」が定められているため、日本は正式な「軍隊」を持たず、戦争を目的とした武力行使はできません。



軍隊ではない自衛隊は、戦闘を目的とした戦闘行為には関与できません!
自衛官の採用区分の違い
自衛官になるには、自衛官採用試験に合格する必要があります。しかし、採用区分によって対象者や任期、合格後の進路なども異なります。代表的な採用区分とそれぞれの特徴に関しては、以下の表を参考にしてください。
採用区分 | 対象 | 学歴 | 任期 | 進路 |
---|---|---|---|---|
自衛官候補生 | 18歳以上33歳未満 | 不問(中卒でも可) | 2年〜3年(更新制) | 任期終了後に民間就職/曹昇任も可 |
一般曹候補生 | 18歳以上33歳未満 | 高卒以上が望ましい(中卒でも可)) | 任期制ではない(定年まで勤務) | 部隊に配属され正規自衛官として勤務 |
防衛大学校学生 | 高校卒業(または見込み)かつ21歳未満 | 入校時は高卒、卒業時に学士取得 | 在学中は学生、卒業後に任官 | 幹部候補生として任官・指揮官を目指す |
自衛隊幹部候補生 | 【一般】 [大卒程度試験] 22歳以上26歳未満の者(20歳以上22歳未満の者は大卒(見込含)、修士課程修了者等(見込含)は28歳未満) [院卒者試験] 修士課程修了者等(見込含)で、20歳以上28歳未満の者 【歯科】 専門の大卒(見込含)20歳以上30歳未満の者 【薬剤科】 専門の大卒(見込含)20歳以上28歳未満の者 | 大学卒(大学院)業(または見込み) | 教育訓練後に任官(定年まで) | 幹部自衛官として部隊運用を担う |
技術曹/航空学生 | 【技術曹】 20歳以上で資格免許等を保有する者 【航空学生】 海:18歳以上23歳未満の者 空:18歳以上24歳未満の者 ※海・空共に高卒者(見込含)又は高専3年次修了者 | 高卒以上(工業・理系分野が多い) | 長期訓練後、技術職や操縦士として勤務 | 航空機操縦士・艦艇技術者など専門職に従事 |
参考:一般曹候補生|自衛官募集サイト
参考:防衛大学校学生|自衛官募集サイト
参考:自衛隊幹部候補生|自衛官募集サイト
参考:技術曹|自衛官募集サイト
参考:航空学生|自衛官募集サイト
自衛官採用試験では、自分の学歴や目指すキャリアに応じて、適したものを受験する必要があります。続いては、各採用区分の詳細について解説します。



まずは、どんな採用区分があるのかやそれぞれの特徴を理解しておきましょう!
自衛官候補生
自衛官候補生とは、任期制の隊員として採用される自衛官の採用区分です。陸上自衛隊は1年9ヶ月(一部技術系は2年9ヶ月)、海上・航空自衛官は2年9ヶ月を1任期(2任期目 以降は各2年)として勤務します。
陸上自衛隊採用後は、約3か月間基礎教育訓練や特技教育を受け、部隊勤務となります。海上自衛隊や航空自衛隊は、陸上自衛隊よりも長い期間の専門的な教育を受けるのが特徴です。
応募資格は、18歳以上33歳未満となっており学歴や職歴に関係なく応募できるため、初めて自衛官を目指す方は自衛官候補生の試験を受けるのがおすすめです。
一般曹候補生
一般曹候補生とは、陸海空自衛隊の中核を担う「曹(下士官)」を養成する制度のことです。自衛官候補生のような任期付きではなく、長期的な勤務を前提とした採用区分となっています。
応募資格は、18歳以上33歳未満となっているため学歴は関係ありません。ただ、試験内容が高卒程度となるため、高卒以上が望ましいとされています。
防衛大学校学生
防衛大学校学生とは、幹部自衛官を4年間の修業期間によって育成するための制度のことであり、「防衛大学校」に入校します。防衛大学校を卒業すると、陸海空曹長に任命され、幹部候補生として幹部候補生学校に入校します。
応募資格は、高校卒業以上(見込み含む)となっており、中卒の方は受験できません。また、21歳未満という規定もあるため、年齢要件も満たしているかは必ず確認しておきましょう。
自衛隊幹部候補生
自衛隊幹部候補生とは、各自衛隊の幹部自衛官を養成するための制度です。幹部候補生になるという点で「防衛大学校学生」と混ざりがちですが、自衛隊幹部候補生は採用後すぐに幹部候補生学校で訓練を受けられます。
応募資格は、受験するコースによっても異なります。コースの種類と応募資格に関しては、以下を参考にしてください。
コースの種類 | 応募資格 |
---|---|
一般幹部候補生 | [大卒程度試験] 22歳以上26歳未満の者(20歳以上22歳未満の者は大卒(見込含)、修士課程修了者等(見込含)は28歳未満) [院卒者試験] 修士課程修了者等(見込含)で、20歳以上28歳未満の者 |
歯科幹部候補生 | 専門の大卒(見込含)20歳以上30歳未満の者 |
薬剤科幹部候補生 | 専門の大卒(見込含)20歳以上28歳未満の者 |
技術曹/航空学生
「技術曹」と「航空学生」とは、特定の専門職の養成や資格保有者を採用する制度です。
応募資格は、20歳以上で資格免許等を保有する者や18歳以上23・24歳未満の者など、受験する試験によっても異なるため、どの試験なら受験できるかを事前に確認しておきましょう。
【学歴別】自衛官になるには?
自衛官採用試験は、区分によって応募資格が異なります。年齢や学歴次第で、受験できない採用試験も多いです。そのため、自分の学歴や年齢に適した採用試験を知っておくことが大切です。



続いては、中卒から大卒、社会人、女性などに分けて自衛官になる方法を解説します!
大卒から自衛官を目指す場合
大卒から自衛官を目指すなら「自衛隊幹部候補生」がおすすめです。採用後すぐに幹部構成学校で訓練を受けることができ、早いうちからの昇進が可能となります。応募資格が大卒や大学院卒のため、大卒以上の学歴を持っている方だけが受けられる点もおすすめな理由です。
また、採用後のキャリアや資格の有無によっては「技術曹」や「航空学生」を受験することで、希望の職種で働きやすくなるでしょう。
高卒から自衛官を目指す場合
高卒から自衛官を目指すなら「一般曹候補生」がおすすめです。高卒以外でも、一般的な自衛官を目指している方の多くが「一般曹候補生」を受験します。
ただ、将来的に幹部になり自衛官として昇進したいなら「防衛大学校学生」を受験しましょう。「自衛隊幹部候補生」より時間はかかりますが、高卒でも幹部自衛官になれる方法としておすすめです。
中卒から自衛官を目指す場合
中卒から自衛官を目指すなら「自衛官候補生」がおすすめです。自衛官候補生には年齢制限しかないため、学歴関係なく受験できます。
また、高卒以上の学歴があっても「自衛官として一生働き続けるかどうかはわからない」という方におすすめです。任期が1年9ヶ月から2年9ヶ月となっているため、任期終了後に自衛官を続けるかどうかを検討できます。
社会人から自衛官を目指す場合
社会人から自衛官を目指すなら「自衛官候補生」か「一般曹候補生」がおすすめです。他の採用区分にも当てはまっていれば受験した方が良いですが、大卒以上や年齢などで制限があります。「自衛官候補生」や「一般曹候補生」には年齢制限しかないため、多くの社会人の方が応募資格を満たせるでしょう。
ただ、自衛官として活かせるような専門的な資格を保有している方は「技術曹」を受験してみるのもおすすめです。
女性が自衛官を目指す場合
自衛官は、性別に関係なく活躍できる職場となっています。そのため、女性だからと言って諦める必要はありません。実際、女性自衛官として働いている方は多く、令和5年3月末時点で19,866名が働いています。
以上の表からもわかる通り、これからはさらに女性自衛官が増えることが予測されます。そのため、女性であっても学歴や年齢によって自分に適した採用試験を選ぶことが大切です。



男女関係なく活躍できるのが自衛官の良い部分です!
自衛官を目指すなら知っておくべきこと
自衛官を目指す方は、自衛官採用試験以外にも理解しておかなければいけないことがあります。具体的に知っておくべきこととしては、以下の6つが挙げられます。
- 自衛官の仕事内容
- 自衛官の1日の流れ
- 自衛官の階級
- 自衛官の学校の種類
- 自衛官の年収
- 自衛官として活躍するのに必要な能力
以上は、自衛官の基礎知識であり、自分がどんなキャリアを描きたいのかを考える際にも重要な指標となります。暗記する必要はありませんが、採用試験を受験する前に以上の内容を理解しておきましょう。



仕事内容や階級に関しては、自衛官としてのキャリアを考える上で非常に重要です!
自衛官の仕事内容
自衛官の主な仕事内容としては、国防や災害支援、国際平和維持活動などが挙げられます。それらを行うために、以下3つの部隊に分かれているのが特徴です。
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
また、部隊によって専門的な装備を所持しており様々な事態に対応できるだけでなく、防衛任務に関連する以外にも様々な部署があります。食事や衛生、輸送に関する職種などもあるため、どんな方でも自分の能力を活かせる業務を見つけられるでしょう。



体力以外にも活かせる職種はたくさんあるんです!
自衛官の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。


自衛官の1日の流れ
自衛官を目指すなら、自衛官が1日の中でどんな働き方をしているかを知っておくことが大切です。自衛官の1日の流れは、以下の表を参考にしてください。
参考:自衛官の1日|第10師団
「課業」とは、訓練や任務のことであり、災害対応などが無い場合には、何かしらの課業を行うのが一般的です。陸海空に関わらず基本的に1日の流れは共通していますが、職種や演習の日によってはズレることを理解しておきましょう。



自衛官は基本的に土日祝日休みとなります!
自衛官の階級
自衛官には、組織的な指揮系統や職責の違いを明確にするために階級制度があります。採用区分によって目指せる階級やスタートする階級が異なります。
自衛官の階級に関しては、以下の表を参考にしてください。
共通呼称 | 陸上自衛隊 | 海上自衛隊 | 航空自衛隊 | ||
---|---|---|---|---|---|
幹部 | 将官 | 将 | 陸上幕僚長 | 海上幕僚長 | 航空幕僚長 |
陸将 | 海将 | 空将 | |||
将補 | 陸将補 | 海将補 | 空将補 | ||
佐官 | 1佐 | 1等陸佐 | 1等海佐 | 1等空佐 | |
2佐 | 2等陸佐 | 2等海佐 | 2等空佐 | ||
3佐 | 3等陸佐 | 3等海佐 | 3等空佐 | ||
尉官 | 1尉 | 1等陸尉 | 1等海尉 | 1等空尉 | |
2尉 | 2等陸尉 | 2等海尉 | 2等空尉 | ||
3尉 | 3等陸尉 | 3等海尉 | 3等空尉 | ||
准尉 | 准尉 | 准陸尉 | 准海尉 | 准空尉 | |
曹士 | 曹 | 曹長 | 陸曹長 | 海曹長 | 空曹長 |
1曹 | 1等陸曹 | 1等海曹 | 1等空曹 | ||
2曹 | 2等陸曹 | 2等海曹 | 2等空曹 | ||
3曹 | 3等陸曹 | 3等海曹 | 3等空曹 | ||
士 | 士長 | 陸士長 | 海士長 | 空士長 | |
1士 | 1等陸士 | 1等海士 | 1等空士 | ||
2士 | 2等陸士 | 2等海士 | 2等空士 |
自衛官の階級を上げるためには、昇任試験に合格しなければいけません。ただ、幹部以上を目指すなら「自衛隊幹部候補生」として採用される必要があります。
また、階級によって給料や定年年齢なども異なるため、階級別の特徴についても理解しておくことが大切です。



目指す階級次第では、高卒ではなく大卒になった上で試験を受けるのもおすすめです!
自衛官の階級について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。


自衛官の年収
自衛官の年収は、大体300〜1,000万円前後と幅があります。その理由は、採用区分や階級によって月額給与やボーナス額が異なるからです。
採用区分別の自衛官の年収は、以下の表を参考にしてください。
採用区分 | 月額給与 | ボーナス額 | 想定年収 |
---|---|---|---|
一般幹部候補生 (大卒任官時) | 296,100円 | 1,362,060円 | 4,915,260円 |
一般曹候補生 (高卒初任給) | 224,600円 | 1,033,160円 | 3,728,360円 |
自衛官候補生 (高卒初任給) | 224,600円 (最初の3か月は179,000円) | 1,033,160円 | 3,728,360円 |
防衛大学校生 防衛医科大学校学生 | 151,300円 | 695,980円 | 2,511,580円 |
高等工科学校生徒 | 138,000円 | 634,800円 | 2,290,800円 |
年収は、自衛官としてのやりがいを形成する重要な要素です。そのため、採用区分別にどの程度の年収を受け取れるのかを理解した上で、受験する採用区分を決める要素の1つにしましょう。



お金だけが全てではありませんが、年収も1つのやりがいとなるのは間違いありません!
自衛官として活躍するのに必要な能力
自衛官になるために、特別な資格が必要なわけではありません。ただ、自衛官として活躍するためには以下のような能力が求められます。
- 国や国民を守る使命感
- 体力や忍耐力
- 協調性と冷静な判断力
以上のいずれかが無いと、自衛官になることやなってからも活躍できないかもしれません。自衛官を目指す方は、自分に必要な能力があるかどうかを事前に確認しておきましょう。



今なかったとしても自衛官になってから身に付けることも可能です!
国や国民を守る使命感
自衛官として活躍するためには、国や国民を守る使命感が絶対に必要です。自衛官の仕事は全て国や国民を守ることに繋がっており、自分のために働くわけではありません。そのため「誰かのために」と使命感を持って働ける方が、災害時などに活躍できる可能性が高いです。
また、自衛官の訓練は自分をギリギリの所まで追い込むことも多いです。日々の訓練が辛かったとしても「誰かのためになる」と考えることができれば、辛い訓練も乗り切れるでしょう。
体力や忍耐力
自衛官として活躍するためには、体力や忍耐力も非常に重要となります。自衛官の任務には厳しい環境下での活動や長時間に及ぶ訓練が多く、精神論だけではどうにもならないことが多いです。
野外演習に耐えられるような持久力や重装備を背負って活動する体力、どんな現場でも冷静に活動する忍耐力などが求められることを理解しておきましょう。
協調性と冷静な判断力
自衛官として活躍するためには、協調性と冷静な判断力も必要です。自衛隊の訓練や任務は1人で行うことはなく、どんな場面でもチームで活動します。チームで円滑な活動を進めるためには、協調性が不可欠です。
また、初めての現場や緊張感のある現場でも動揺することなく、訓練通りの活動をするための冷静な判断力も必要となります。
自衛官になるなら基礎知識を理解しておこう
自衛官になるには、採用区分別の試験の種類を理解し、どの試験が適しているかを判断することが大切です。さらに、自衛官の基礎知識についても理解していなければ、適切な試験を受験できないかもしれません。
自衛官になることを目的にするのではなく、自衛官になった後にどんなキャリアを歩みたいかも考えた上で自衛官採用試験を受験することが大切です。



自衛官を目指すなら採用試験について深く理解することが大切です!
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